ドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOX(2)

ドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOX(1)の続きです。

このBOXはおおよそ、ルネサンス音楽とバロック音楽を押えていて、バッハやヴィヴァルディの有名曲のみならず、テレマン、スカルラッティ、モンテヴェルディ、ブクステフーデ、ラッスス、ゼレンカ、リュリなど、遠い昔の大家たちの傑作が心憎いばかりに選曲されています。

ちなみに、一番古い音楽はCD27のマショー、ペロティヌスの音楽。

※ペロティヌスは一時期、ペロタンとも呼ばれていました。

このマショーのノートルダム・ミサ曲は何と14世紀に成立しています。

学校の音楽の授業では、バッハ以前の音楽はまるで無視されていますが、それが何と勿体ないこと(機会損失)かを思い知らせるような傑作です。

アルス・ノーヴァという、当時の新しい音楽技法の開発により、グレゴリオ聖歌や吟遊詩人の歌に比べて遥かに近代的な響きを獲得し、4つの声部が不思議な和声を発しながら、朗々とミサを歌い上げます。

ここでの奏者は往年のデラー・コンソートとコレギウム・アウレウム。粗野で、まさに農村の教会で聴いているような力強い祈りを感じます。

デラーは、現在では米良さんで有名なカウンターテナーのパイオニアで、1960年代から熱心に古楽の普及に取り組んでいましたが、それにしても当時マショーを取り上げるなんて、本当に冒険だったと思います。

あと余談ですが、この曲に関しては、アンサンブル・オルガヌムの名盤もおすすめです。これはなかなかパンチの利いた演奏です。

まるで高野山で聴く声明(しょうみょう)のように不気味なだみ声が、反響の良い会場に目一杯広がり、その雰囲気たるや、まるで冥界のようです。

なお、そのオルガヌム盤も、同じハルモニアムンディから1枚もので出ていて、さすが古楽では一、二を争う専門レーベルだと思わず唸ってしまいました。

それでも、新しい録音が中心のこのBOXにおいて、オルガヌム盤ではなく、デラーの意義ある録音を選んだところは担当者の慧眼であったと思います。

そしてこのような、知られざる、しかし音楽史上大変重要な傑作に出会えるのもドイツ・ハルモニア・ムンディ設立50周年記念限定BOXの醍醐味です。

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