クラウス・テンシュテット EMI録音ボックス(1)

現代のフルトヴェングラーともいわれた逸材

クラウス・テンシュテットの名前を言えば、「あゝ、懐かしい」と声を漏らすクラシックファンは少なくないと思います。

1926年生まれと言いますから、(2017年6月現在)生きていても不思議ではないのですが、1998年に71歳で亡くなっています。

ベームやバーンスタイン、アーノンクールなんかに比べると地味ですが、フルトヴェングラーの再来と評されたり、ライヴァル的存在には容赦なかったカラヤンが「テンシュテットは自分の後継者である」と発言するほど、その実力は折り紙付きでした。

得意としたレパートリーもドイツ・オーストリア系の交響曲や管弦楽曲で、スケールの大きい、開放感のある演奏を聴かせてくれました。元々は歌劇場の叩き上げなので、オペラの録音があったら、と思うのですが、残されていないのは残念です。

それでも、彼が遺した演奏。例えば、マーラーの交響曲全集は、前に取り上げたバーンスタインのもの(ドイツ・グラモフォン)と並んで、決定的名盤の評価を得ています。とにかく迫力十分で、その半面、マーラーのドロドロした部分には拘泥せず、むしろ客観的に彫琢していたのが見事だったです。

ところで、彼のオーケストラは、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団でした。

これだけドイツのコテコテの指揮者ですから、シュターツカペレ・ドレスデンとか、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団あたりを指揮しそうですが、なぜかドイツ系の名門オーケストラとはそりが合わなかったと伝わっています。特にウィーン・フィルとは共演が1回きり。カラヤンのサポートがあり、頻繁に共演もしたベルリン・フィルでさえ、実際の関係は良好でなかったらしいです。

そのような彼を温かく迎えたのが、ロンドン・フィル。

Wikipediaにもありますが、「我々はクラウスのためなら120%の力を出し切る」とメンバーに言わしめたり、辛辣で知られるイギリスの音楽メディアにもこのコンビの演奏は絶賛されるなど、おそらく人生最良の時をテンシュテットはロンドンの地で迎えたかと思います。

しかし、残念なことにこの人気絶頂のさなか、テンシュテットは喉頭がんを発症してしまい、長い闘病生活を強いられます。それでも彼は不屈の精神でステージに立ち続け、1988年には何と来日まで成し遂げ、圧倒的な演奏で我々日本人に深い印象を遺しました。

 

●1988年 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演

10月15日 市川文化会館
ベートーヴェン エグモント序曲
Rシュトラウス ドン・ファン
ベートーヴェン 交響曲第3番

 

10月18日 東京サントリーホール
ワーグナー タンホイザー 序曲とヴェヌベルクの音楽
ワーグナー リエンチ序曲
ワーグナー 神々の黄昏、ジークフリートのラインの旅
ワーグナー 神々の黄昏、ジークフリートの葬送行進曲
ワーグナー マイスタージンガー、第1幕への前奏曲

10月23日 昭和女子大人見記念講堂
ベートーヴェン エグモント序曲
Rシュトラウス ドン・ファン
ベートーヴェン 交響曲第3番

10月24日 大阪フェスティバルホール
ベートーヴェン エグモント序曲
Rシュトラウス ドン・ファン
ベートーヴェン 交響曲第3番

10月25日 シンフォニーホール
ワーグナー タンホイザー 序曲とヴェヌベルクの音楽
ワーグナー リエンチ序曲
ワーグナー 神々の黄昏、ジークフリートのラインの旅
ワーグナー 神々の黄昏、ジークフリートの葬送行進曲
ワーグナー マイスタージンガー、第1幕への前奏曲

 

サントリーホールでの演奏は当時テレビで放映されて大変な評判となり、その後DVD化もされました。

演奏は、これぞワーグナーと言いますか、スケール感が豊かで感動的。オーケストラは共感を持って演奏に打ち込み、テンシュテットはクライマックスに向けて周到にドラマを形成していきます。タンホイザー序曲の燃え上がるような盛り上がりは、以前ご紹介したカラヤンとウィーン・フィルの演奏と肩を並べると思います。

もうテンシュテットについては、語りだしたら止まらなくなるほど魅力たっぷりなのですが、今回ご紹介するEMI録音BOXを聴いて頂ければ、私の興奮の意味もご理解頂けるかもしれません。

Disc 1
・ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 op.55『英雄』
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1991年9月26日、10月3日 ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール ライブ

・ベートーヴェン:『プロメテウスの創造物』op.43 序曲
・ベートーヴェン:序曲『コリオラン』op.62
・ベートーヴェン:『エグモント』op.84 序曲
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年5月11-12日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

Disc 2
・ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 op.68『田園』
・ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1985年9月15,16,19日、1986年3月27日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

・ベートーヴェン:『フィデリオ』序曲 op.72b
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年5月11-12日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

Disc 3
・ブラームス:交響曲第1番ハ短調 op.68
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1983年9月21,22日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

・ブラームス:ドイツ・レクィエム op.45 第1曲、第2曲

Disc 4
・ブラームス:ドイツ・レクィエム op.45 第3曲~終曲
ジェシー・ノーマン(ソプラノ)
ヨルマ・ヒュニネン(バリトン)
ロンドン・フィルハーモニー合唱団
BBCシンフォニー・コーラス
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年8月19,20,23-25日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

・ブラームス:運命の歌 op.54
ロンドン・フィルハーモニー合唱団
BBCシンフォニー・コーラス
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1985年5月2日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

Disc 5
・ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』(ハース、1881年版)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1981年12月13,15,16日 ベルリン、フィルハーモニー

Disc 6
・ブルックナー:交響曲第8番ハ短調(ノーヴァク、1890年版)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年9月24-26日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

Disc 7
・マーラー:交響曲第1番ニ長調『巨人』
シカゴ交響楽団
録音:1990年5月31日-6月4日 シカゴ、オーケストラ・ホール ライヴ

Disc 8
・シューマン:交響曲第3番変ホ長調 op.97『ライン』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1978年10月17-18日 ベルリン、フィルハーモニー

・シューマン:交響曲第4番ニ短調 op.120
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1980年4月18-20,22日 ベルリン、フィルハーモニー

Disc 9
・R.シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』op.作品30
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1989年3月 ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール

・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』op.20
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1986年9月 ロンドン、ウォルサムストウ・アセンブリー・ルームズ

・R.シュトラウス:交響詩『死と変容』op.24
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年3月28,29日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ、

Disc 10
・ワーグナー:『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」
・ワーグナー:『神々の黄昏』~「夜明けとジークフリートのラインの旅」
・ワーグナー:『神々の黄昏』~「ジークフリートの死と葬送行進曲」
・ワーグナー:『ラインの黄金』~「ワルハラへの神々の入場」
・ワーグナー:『ジークフリート』~「森のささやき」
・ワーグナー:『ワルキューレ』~「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1980年10月6,8,9日 ベルリン、フィルハーモニー

Disc 11
・ワーグナー:『タンホイザー』序曲
・ワーグナー:『リエンツィ』序曲
・ワーグナー:『ローエングリン』第1幕への前奏曲
・ワーグナー:『ローエングリン』第3幕への前奏曲
・ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年12月15日、1983年4月16,17日 ベルリン、フィルハーモニー

Disc 12
・メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 op.90『イタリア』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1980年4月18-20,22日  ベルリン、フィルハーモニー

・シューベルト:交響曲第9番ハ長調 D.944『グレート』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1983年4月21-22日 ベルリン、フィルハーモニー

Disc 13
・ムソルグスキー:交響詩『禿山の一夜』(リムスキー=コルサコフ編)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1990年5月10日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

・コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』
・プロコフィエフ:組曲『キージェ中尉』
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1983年9月22,23,26日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

Disc 14
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 op.72a
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年5月11-12日 ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ

・シューマン:4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック ヘ長調 op.86
ノルベルト・ハウプトマン、マンフレート・クリア、クリストファー・コーラー、ゲルト・ザイフェルト(ホルン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1978年10月17-18日 ベルリン、フィルハーモニー

・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ長調 op.95『新世界より』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年3月14,15日 ベルリン、フィルハーモニー

指揮 クラウス・テンシュテット

 

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