ハイフェッツ/ヴァイオリン協奏曲集


Disc-1
・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
ボストン交響楽団
シャルル・ミュンシュ(指揮)
録音:1955年11月27日&28日

・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35
シカゴ交響楽団
フリッツ・ライナー(指揮)
録音:1957年4月19日

Disc-2
・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
シカゴ交響楽団
フリッツ・ライナー(指揮)
録音:1955年2月21日&22日

・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.47
シカゴ交響楽団
ワルター・ヘンドル(指揮)
録音:1959年1月10日&12日

Disc-3
・ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調Op.26
・スコットランド幻想曲Op.46
ロンドン新交響楽団
マルコム・サージェント(指揮)
録音:1961年6月15日&22日、1962年5月14日&16日

・メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64
ボストン交響楽団
シャルル・ミュンシュ(指揮)
録音:1959年2月23日&25日

Disc-4
・プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調Op.63
ボストン交響楽団
シャルル・ミュンシュ(指揮)
録音:1956年2月24日

・ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調Op.37
ロンドン新交響楽団
マルコム・サージェント(指揮)
録音:1961年6月15日&22日

・ローザ:ヴァイオリン協奏曲 Op.24
ダラス交響楽団
ワルター・ヘンドル(指揮)
録音:1956年3月27日

Disc-5
・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218
ロンドン新交響楽団
マルコム・サージェント(指揮)
録音:1962年5月14日&16日

・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219『トルコ風』
ヤッシャ・ハイフェッツ&室内管弦楽団
録音:1963年10月6日

・モーツァルト:協奏交響曲変ホ長調K364
ウィリアム・プリムローズ(ヴィオラ)
RCAビクター交響楽団
アイズラー・ソロモン(指揮)
録音:1956年10月2日

Disc-6
・グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調Op.82
RCAビクター交響楽団
ワルター・ヘンドル(指揮)
録音:1963年6月3日&4日

・ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調Op.102
グレゴール・ピアティゴルスキー(チェロ)
RCAビクター交響楽団
アルフレッド・ウォーレンスタイン(指揮)
録音:1960年5月19日&20日

・J.S.バッハ:2台のヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1943
エリック・フリードマン(ヴァイオリン)
ロンドン新交響楽団
マルコム・サージェント(指揮)
録音:1961年5月19日&20日

・ヴィヴァルディ:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 RV.547
グレゴール・ピアティゴルスキー(チェロ)
室内管弦楽団
マルコム・ハミルトン(指揮)
録音:1963年10月10日

ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)

 

このブログでクラシックのジャンルはひととおり取り上げたつもりでしたが、空白の地帯がありました。
協奏曲です。
正直申しまして私自身、協奏曲のあのステージ・ショーを前面に押し出したような世界というものが若干苦手です。それよりも独白的なピアノソナタや弦楽四重奏の方に大きな魅力を感じます。要は、根が暗いんでしょうね(;^ω^)ノ
しかし、度を越えて凄まじいテクニックのソリストと、それに負けじと熱演するオケ、大喝采する観客の一体感が記録されたような演奏は、逆に何度も何度も聴き直します。
私が好きなのはまず、ホロヴィッツ! 彼がオーマンディ&ニューヨーク・フィルと共演したラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、それこそエアチェックテープが伸びてしまうくらい、繰り返し聴いたものです。

ホロヴィッツはスタインウェイを愛用していましたが、この曲にはまさにうってつけの、乾いた、でも色合いの深い音です。それにしても3楽章の不気味なマーチ風の個所からコーダになだれ込むあたりは人間業じゃないです。悪魔の所業です(笑)。だいたい、このような曲を弾いてしまうこと自体、アンビリーバブルです。オーマンディの煽り方も私たちが望むとおりで、終演後、聴衆の大きな歓声といっしょに思わず拍手してしまいました。

次がヴァイオリニストのハイフェッツ。ホロヴィッツとハイフェッツは、ソリスト史上、別格の存在です。両方ともユダヤ系で20世紀初頭にロシアに生まれ、早くからアメリカに渡り、カーネギーホールで大活躍。そしてRCAレーベルに遺した多くの名演で、世界中にその名を轟かせました。
どんな難曲もやすやすと弾きこなせるテクニックの凄さもさることながら、スピード感、音色の美しさ、劇場型のスリリングな表現力は、ドイツやフランス、イギリスの名手たちの流儀とは明らかに異質のもので、革新的というより、19世紀までのリストやパガニーニのような演奏スタイルの最後の体現者と見るべきかもしれません。

二人の大きな違いは、活動時期です。ホロヴィッツは、50歳の最も脂の乗り切った時期に突如ステージから去り、12年喪の長いブランクの後に再び現れたかと思うと(ヒストリックリターン)、技巧の衰えまくった晩年まで比較的、息の長い活動を続けました。それに対し、ハイフェッツはソロ、室内楽(百万ドルトリオ)、協奏曲、小品集など幅広いジャンルの曲を弾いて弾いて弾きまくり、70代を迎えた途端、ホロヴィッツとは対照的にすっぱり演奏活動から身を引いてしまったのです(※15年後の1987年に長寿を全うします)。実に不思議な関係の二人の名手でありました。

ところで、ハイフェッツの録音は非常に膨大です。RCAの集大成でも103枚のボックスセットになります。これは高額でもあり、なかなか万人にはお勧めできません。

しかし、非常に手ごろなBOXがソニーから出ています。

これさえあれば、ハイフェッツの凄さがお分かりになれるというものでしょう。
チャイコフスキーとメンデルスゾーンのスピード感と切れ味は尋常でない。現代でもこのレヴェルのヴァイオリニストはかなりたくさんいますが、ハイフェッツみたいにサディスティックな追い込み方をする人は珍しいです。ちょっと怖さを感じます。
あと、プロコフィエフの変拍子も難なくさばきますね。それにヴュータンの素晴らしさ!3楽章のクライマックスは壮絶。こんな演奏を目の前で聴いたら失神するかもしれません(笑)。

でも、ハイフェッツの魅力というのは、決して技巧だけでないんです。その音色。
私の友人に長くヴァイオリンをやっていた方がいるんですが、その方曰く、ハイフェッツの音の特徴、奏法はクライスラーとかに近く、現代でこうした音を出せるのはパールマンしかいないとのこと。少し意外な気はしたのですが、彼の言いたいことは分かります。
ハイフェッツが技巧だけの人でないことの証明。それはスコットランド幻想曲を聴けばわかります。この曲は映画音楽のように甘美な旋律とノスタルジックな雰囲気が魅力なのですが、ハイフェッツの音色と節回しがとてもロマンティックで、これはぜひ多くの方に聴いて頂きたいですね。

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