レオポルト・ウラッハの芸術

レオポルト・ウラッハ(1902-1956)は、もはや遠い昔の演奏家になりつつあります。
筆者でさえウラッハが亡くなった後に生まれているので、彼がどのような演奏をしていたか、レコードでしか知るすべはないのですが、それでも1990年代のレコード芸術などでは、クラリネットがらみの曲は、必ずと言っていいほどウラッハのCD推しだったことを覚えています。

ウラッハは、戦前のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者として、また戦後はウエストミンスター社と制作した数々の室内楽の決定盤で知られた名手です。その憂いに満ちた音色、飛翔するような歌いまわし、端正さは今日でも色褪せることはありません。

そもそもクラリネットは、19世紀にキー・システムが導入され、圧倒的に吹きやすくなって以降は、日本で広まっているベーム式と、ドイツを中心に愛好されているエーラー式の2種が標準的となり、ウラッハが用いていたウィーン・アカデミー式のようなタイプは少数派という状況でした。
※とは言え、ウィーン式は、若干構造が違うのと、煩雑な操作が僅かに生じる、という部分を除き、エーラー式とそれほど極端な違いはありません。むしろ、エーラー式の機能性に乏しい分、奏者の個性や独特の指使いが色濃く音色に反映され、かつ素朴な音がするウィーン式の方が、ヴィルトゥオーゾのウラッハに合っていたと思われます。

さらにウラッハは、当時の仲間からも驚かれるようなぶ厚いリードを使っていたと言われており、あの立体的で芯の強い音はそうした楽器への拘りから生まれたのか、と今さらながら感服します。
とにかくウラッハは、現代の有名クラリネット奏者たちとは異なるスタイルで吹いていた、というのはご理解頂けるか、と思います。

さて今回、イギリスのスクリベンダムというレーベルから発売されたこのボックス、ウラッハの代表的な録音のほとんどを収録していて、素晴らしいです!
※モーツァルトの五重奏曲と協奏曲は、有名なコンツェルトハウスとロジンスキ盤だけでなく、それぞれシュトロス四重奏団、カラヤンとの競演盤も含んでいて、そこが何とも心憎い。音質が明瞭なのも◎。ウラッハの芯のある憂いに満ちた独特の音色が眼前に広がります。

それにしても、ウラッハのクラリネットもさることながら、当時のウィーンの演奏家たちの、なんと優雅で無垢で歌心に満ちていることか!
シューベルトの八重奏曲の溜め息の出るような美しさなど、二度と戻ってこない時代の記録ですね。
あと、モーツァルトのグランパルティータは1947年盤と1953年盤の聴き比べができるのですが、1947年盤はなんと、フルトヴェングラーが指揮をしています。
木管アンサンブル相手でも、微妙な強弱の付け方など、まさにフルトヴェングラー!3楽章アダージォと5楽章ロマンツェのような遅い楽章の歌わせ方などさすがです。
また、メンデルスゾーンやグリンカ、リヒャルト・シュトラウスの珍しい佳曲も含んでいて、クラリネットの曲について興味のある方にも必聴のボックスかと思います。

 

Disc1
● モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調 K.581

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
アントン・カンパー(第1ヴァイオリン)
カール・マリア・ティッツェ(第2ヴァイオリン)
エーリヒ・ヴァイス(ヴィオラ)
フランツ・クヴァルダ(チェロ)
Recording: 1951 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調 K.622

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
アルトゥール・ロジンスキー(指揮)
Recording: 1954 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc2
● モーツァルト:クラリネット五重奏曲イ長調 K.581

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
シュトロス四重奏団
Recording: 1954

● モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調 K.622

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
Recording: 7th & 8th November 1949 Brahmssaal, Wien

 

Disc3
● モーツァルト:5つのディヴェルティメント変ロ長調 K.439b (Anh.229)

ディヴェルティメント第1番

ディヴェルティメント第2番

ディヴェルティメント第3番

ディヴェルティメント第4番

ディヴェルティメント第5番

レオポルト・ウラッハ(第1クラリネット)
フランツ・バルトシェック(第2クラリネット)
カール・エールベルガー(ファゴット)
Recording: (Nos. 1,4,5) 1953 – (Nos.3,4) 1949

Disc4
● モーツァルト:セレナード第10番変ロ長調 K.361 (370a)『グラン・パルティータ』
指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団団員
Recording: 10th November & 3rd December 1947 Brahmssaal, Vienna

● モーツァルト:セレナード第11番変ホ長調 K.375

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
カール・スウォボダ(オーボエ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
レオポルト・カインツ(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ルドルフ・ハインツ(ファゴット)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc5
● モーツァルト:セレナード第10番変ロ長調, K.361 (370a)『グラン・パルティータ』

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
カール・スウォボダ(オーボエ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(クラリネット)
アルフレート・ボスコフスキー(バセット・ホルン)
ヴィリー・クラウス(バセットホルン)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
レオポルト・カインツ(ホルン)
ヨーゼフ・ラックナー(ホルン)
オットー・ニッチュ(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ルドルフ・ハインツ(ファゴット)
カミロ・エールベルガー(コントラファゴット)
Recording: 1953

● モーツァルト:セレナード第12番ハ短調 K.388 (384a)『ナハトムジーク』

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
カール・スウォボダ(オーボエ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
レオポルト・カインツ(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ルドルフ・ハインツ(ファゴット)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc6
● ベートーヴェン:八重奏曲変ホ長調 Op.103

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
カール・スウォボダ(オーボエ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
レオポルト・カインツ(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ルドルフ・ハインツ(ファゴット)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● モーツァルト:協奏交響曲変ホ長調, K.297b, Anh.C14.01

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
ハンス・カメシュ(オーボエ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ウィーン国立歌劇場室内管弦楽団
ヘンリー・スウォボダ(指揮)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● ベートーヴェン:ロンド変ホ長調, WoO25

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording: 1954

● ハイドン:八重奏曲ヘ長調 Hob.II:F7

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc7
● シューベルト:八重奏曲へ長調 Op.166, D.803

ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
アントン・カンパー(第1ヴァイオリン)
カール・マリア・ティッツェ(第2ヴァイオリン)
エーリヒ・ヴァイス(ヴィオラ)
フランツ・クヴァルダ(チェロ)
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ヨーゼフ・ヘルマン(コントラバス)
Recording: 1951 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● リヒャルト・シュトラウス:セレナード変ホ長調 Op.7(管楽器のための)

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording: 1952 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc8
● ベートーヴェン:七重奏曲変ホ長調 Op.20

バリリ弦楽アンサンブル
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording 1954 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● ベートーヴェン:モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」の
「お手をどうぞ」の主題による12の変奏曲ハ長調 WoO28

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording: 1949

● ベートーヴェン:六重奏曲変ホ長調 Op.71

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(クラリネット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
レオポルト・カインツ(ホルン)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ルドルフ・ハンツル(ファゴット)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc9
● ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番ヘ短調 Op.120-1

● ブラームス:クラリネット・ソナタ第2番変ホ長調 Op.120-2

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
イェルク・デムス(ピアノ)
Recording: 1953 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● シューマン:おとぎ話 Op.132

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
エーリヒ・ヴァイス(ヴィオラ)
イェルク・デムス(ピアノ)
Recording: 1950 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● メンデルスゾーン:演奏会用小品第1番へ短調 Op.113

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(バセット・ホルン)
イェルク・デムス(ピアノ)
Recording: 1950 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● メンデルスゾーン:演奏会用小品第2番ニ短調 Op.114

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・バルトシェック(バセット・ホルン)
イェルク・デムス(ピアノ)
Recording: 1950 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc10
● ブラームス:クラリネット三重奏曲イ短調 Op.114

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
フランツ・クヴァルダ(チェロ)
フランツ・ホレチェック(ピアノ)
Recording: 1952 Mozartsaal, Konzerthaus, Wien

● ブラームス:クラリネット五重奏曲ロ短調 Op.115

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
アントン・カンパー(第1ヴァイオリン)
カール・マリア・ティッツェ(第2ヴァイオリン)
エーリヒ・ヴァイス(ヴィオラ)
フランツ・クヴァルダ(チェロ)
Recording: 1952 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

 

Disc11
● グリンカ:悲愴三重奏曲ニ短調

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
カール・エールベルガー(ファゴット)
パウル・バドゥラ=スコダ(ピアノ)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● リムスキー=コルサコフ:五重奏曲変ロ長調

レオポルト・ウラッハ(クラリネット)
カール・エールベルガー(ファゴット)
ゴットフリート・フォン・フライベルク(ホルン)
ハンス・レズニチェク(フルート)
ローラント・ラオペンシュトラオホ(ピアノ)
Recording: 1949 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

● リヒャルト・シュトラウス:組曲変ロ長調 Op.4(13管楽器のための)

ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
Recording: 1952 Mozartsaal, Konzerthaus, Vienna

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