ハンガリー弦楽四重奏団のバルトーク

クラシック初心者に聞いてほしい傑作の森

このブログをご覧になってくださる皆様の中で、今までクラシック音楽と無縁であった方は少なくないでしょうね。
今を時めく可愛らしいアイドルが元気いっぱい歌う訳でもなく、激しい魂をぶつけるロックとも色合いが違う。かと言って、大人の女性がしっとりと聴かせるバラードのような、みんなで哀しみと希望を共有できるような音楽でもない。
そう、一般的にクラシックは坊ちゃん刈りの超優等生が聴く音楽。高尚なご趣味ですね、と誉め言葉なのか失笑なのか微妙なセリフを言われ、では一緒に楽しみましょうか?と返したら、結構です…と立ち去られてしまうような音楽。
それは被害妄想だろうと仰る方もおられますが、CDショップでは狭い奥の売り場があてがわれ、さらに地方では数枚のオムニバス盤が置かれるだけというのが現実です。某・準国営放送もクラシックはウケないものだと、芸能人を起用してお気楽冗談交じりの番組を定期的に組む有様ですから…。

でも、あえて私は言いたいのですが、クラシックはそんな良い子やスノッブのための、さえない音楽なんかじゃない!
例えば今日ご紹介するバルトークの弦楽四重奏曲なんて、カッコよさの極致ですよ。

バルトーク(1881年 – 1945年)は、ハンガリーが生んだ偉大な作曲家です。
作曲家であると同時に民族音楽学の大家でもあったバルトークは、20代半ばで同郷のこれまた大作曲家、コダーイとともにハンガリー各地の農民音楽の採集にまわります。採集にあたって、バルトークは重い円筒式録音機を携えていたそうで、この作業は決して楽なものではなかったようです。
そうやって集めた膨大な民謡に触れつつ、彼は独自の語法でそれらを自分のものにしていき、ロマン派とはかなり違った作風の確立に成功します。
その後は、管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲、器楽曲、オペラ、声楽曲などあらゆるジャンルで傑作を量産したバルトークでしたが、ナチスを嫌ってアメリカに渡って以降、生活が困窮。それでも多くの支援者の助けを得て「管弦楽のための協奏曲」等の傑作を書きますが、白血病に罹患し、64歳の短い生涯を閉じます。

ウィキペディア バルトーク についての記事

 

これだけ波乱万丈の人生をおくり、またハンガリーという熱血漢の多い土地柄の出身ということもあってか、バルトークの音楽は非常に激しいです。
「管弦楽のための協奏曲」、「弦・打楽器・チェレスタのための音楽」、「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」等の傑作は、おそらくクラシックの穏健なイメージとは真逆にある、野性味に溢れた音楽です。でも曲間にふと、まばゆいばかりの妖しい美しさが立ち現れる瞬間もあり、聴けば聴くほど探求心がそそられる作品群かと思います。

今回ご紹介する弦楽四重奏曲全集もすばらしい。ロックとかヘヴィーメタルの世界ですね、これは。
バルトークは生涯に6曲の弦楽四重奏曲を書いていますが、後ろに行くにしたがってどんどん形式的な破壊を試みていきます。
激しい不協和音、変拍子と無機的な旋律が循環するように繰り返されたかと思うと、突然、ハンガリーの民謡的な素朴な音楽に切り替わり、安心していると急に激しいピッツィカートが鳴り響く。
尋常な音楽ではないです。でも、現代に近い音楽だから学問的知識がないと太刀打ちできないというのは誤解で、クラシックに無縁の方こそ、この異様な世界観にどっぷりつかって頂きたい。

Disc 1:
・バルトーク:弦楽四重奏曲第1番Op.7,Sz.40
・バルトーク:弦楽四重奏曲第3番Sz.85
・バルトーク:弦楽四重奏曲第5番Sz.102

Disc 2:
・バルトーク:弦楽四重奏曲第2番Op.17,Sz.67
・バルトーク:弦楽四重奏曲第4番Sz.91
・バルトーク:弦楽四重奏曲第6番Sz.114

ハンガリー四重奏団
ゾルターン・セーケイ、ミヒャエル・クットネル(ヴァイオリン)
デネーシュ・コロムサイ(ヴィオラ)、ガブリエル・マジャル(チェロ)
録音:1961年、ベートーヴェンザール、ハノーファー(ステレオ)

 

ものすごい迫力のバルトークの自作自演もどうぞ

大作曲家であり、偉大な音楽学者でもあったバルトークは、また腕利きのピアニストでもありました。
そのバルトークが自らピアノを弾き、自作を演奏した記録が残っています。
とにかく熱い!怖い! ぜひぜひその素晴らしい世界をお耳でお確かめください。

バルトークとシゲティによる狂詩曲第1番の演奏(youtubeより パブリックドメイン音源)

 

バルトーク・プレイズ・バルトーク 収録内容

1-3. コントラスツ Sz.111(録音:1940年5月13日 ニューヨーク)
4-5. 狂詩曲 第1番 Sz.86(録音:1940年5月4日 ニューヨーク)
6-37. ミクロコスモス Sz.107(抜粋)(録音:1940年4月29-30日, 5月7,16日 ニューヨーク)

ベラ・バルトーク(ピアノ)
1-5 ヨーゼフ・シゲティ(ヴァイオリン)
1-3 ベニー・グッドマン(クラリネット)

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