ジャック・ティボー名演集

古き佳き大ヴァイオリニストの足跡を聴く

 ジャック・ティボー名演集
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【収録内容】

Disc 01
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音:1929年5月28日、パリ

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音:1929年6月7日、パリ

フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番ト短調 Op.45
マルグリット・ロン(ピアノ)
モーリス・ヴィユー(ヴィオラ)
ピエール・フルニエ(チェロ)
録音:1940年5月10日、パリ

 

Disc 02
ショーソン:ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセール Op.21
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
ルイ・イスナール、ヴラディーミル・ヴルフマン(ヴァイオリン)
ジョルジュ・プランパン(ヴィオラ)
モーリス・アイゼンベルク(チェロ)
録音:1931年7月1,2日、パリ

ショーソン:詩曲 Op.25
ウジェーヌ・ビゴー指揮、コンセール・ラムルー管弦楽団
録音:1947年11月、パリ

サン=サーンス:ハバネラ Op.83
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月2日、ロンドン

 

Disc 03
ドビュッシー/ハルトマン編:ミンストレル
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音:1929年6月7日、ロンドン

ドビュッシー/ハルトマン編:亜麻色の髪の乙女
ハロルド・クラクストン(ピアノ)
録音:1927年2月14日、ロンドン

ドビュッシー/ショワネル編:ゴリウォーグのケークウォーク
ハロルド・クラクストン(ピアノ)
録音:1925年11月25日、ヘイズ

フォーレ:子守歌 Op.16
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音:1931年7月1,2日、パリ

サン=サーンス:ノアの洪水 Op.45~前奏曲
ジョルジュ・ド・ロスネ(ピアノ)
録音:1929年5月29日、パリ

マルシック:スケルツァンド
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月1日、ロンドン

シマノフスキ:アレトゥーサの泉
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月1日、ロンドン

ドゥシュキン(伝パラディス):シチリアーノ
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1930年4月23日、ミドルセックス

アルベニス/クライスラー編:マラゲーニャ Op.165-3
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月1日、ロンドン

アルベニス/クライスラー編:タンゴ Op.165-2
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月1日、ロンドン

デプラーヌ:イントラーダ
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1933年7月2日、ロンドン

ファリャ/コハンスキ編:ホタ
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1930年4月23日、ミドルセックス

ファリャ/クライスラー編:『はかなき人生』~スペイン舞曲 第1番
ジョルジュ・ド・ロスネ(ピアノ)
録音:1929年5月29日、パリ

ラヴェル/シャトリーヌ編:ハバネラ形式による小品
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1944年5月28日、パリ

クライスラー:ルクレールの様式によるタンブーラン
ハロルド・クラクストン(ピアノ)
録音:1925年11月25日、ヘイズ

グラナドス/クライスラー編:アンダルーサ
ハロルド・クラクストン(ピアノ)
録音:1927年10月21日、ロンドン

グラナドス/ティボー編:ロンデーリャ・アラゴネーサ
ハロルド・クラクストン(ピアノ)
録音:1927年10月21日、ロンドン

グラナドス/ティボー編:悲しき舞曲
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1930年4月23日、ミドルセックス

 

Disc 04
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219『トルコ風』
シャルル・ミュンシュ指揮、パリ音楽院管弦楽団
録音:1941年6月1日、パリ

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
ポール・パレー指揮、コンセール・ラムルー管弦楽団
録音:1947年、パリ

モーツァルト/クライスラー編:セレナード第7番ニ長調 K.250『ハフナー』~ロンド
タッソー・ヤノプロ(ピアノ)
録音:1936年3月21日、パリ

 

Disc 05
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調 Op.47『クロイツェル』
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音:1929年5月27,28日、パリ

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調 Op.97『大公』
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
パブロ・カザルス(チェロ)
録音:1928年11月19日&12月3日、ロンドン

 

Disc 06
シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調 D.898
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
パブロ・カザルス(チェロ)
録音:1926年7月5,6日、ロンドン

シューマン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 Op.63
アルフレッド・コルトー(ピアノ)
パブロ・カザルス(チェロ)
録音:1928年11月5,18日&12月3日、ロンドン

ジャック・ティボー(ヴァイオリン)

 

コルトーとの神品というべきソナタ演奏

ジャック・ティボー(1880年9月27日 – 1953年9月1日)は、19世紀に生まれたフランス生まれの大ヴァイオリニストです。わが国でもレコード録音を通してかなり古い時代から知られており、野村あらえびすの名曲名盤ガイドでは、彼の数多くの名盤が紹介されています。

彼のレコードを聴いてみて、まず耳をとらえるのがその何とも言えない懐かしい響きです。流派的にはフランコ=ベルギー楽派に属しますが、もはやティボー流と言っていいような独創性に満ちていて、現代の奏者に彼のような弾き方を求めても誰も成しえないでしょう。

ピアノに向かうコルトー(右)とティボー(左)

特に大ピアニスト、アルフレッド・コルトー(1877年9月26日 – 1962年6月15日)とのコンビで遺したフランクとドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ演奏は、幽玄さと曲の深奥を探るような表現力に満ち、1世紀近く前のノイズにまみれた貧しい音質でありながら、もはや神品と言ってよい高い境地に達しています。

まず、フランクのソナタ。ピアノの深い響きの問いかけにヴァイオリンが呼応する有名な冒頭部。ティボーの奏でる音色の艶めかしさ、時代がかったポルタメントの説得力、これぞフランスのエスプリと言いたい魅力にあふれています。

神が舞い降りた音楽と言われる第4楽章の天衣無縫なティボーの弾きぶり、それを支えるコルトーのデュナーミクの巧みさもまさに名人芸で、音楽はクライマックスに向けて一気呵成に飛翔します。素晴らしい!

次のドビュッシーのソナタになると、現代とは全く違う意味でのエスプレッシーヴォをティボーが発揮し、冒頭のうねるような開始から続く妖艶な響きが聴き手を魅了します。それが第2楽章の中間部、スタッカートの応酬では両者が鬼気迫る掛け合いで譲らず、前の流れに比べて大きな効果を生んでいるのはさすがです。

(写真左から)ピアノのコルトー、チェロのカザルス、ヴァイオリンのティボー

さて、この名コンビに20世紀の大チェリスト、パブロ・カザルスが加われば、まさに鬼に金棒なのですが、ご存じのとおり、3人は「カザルス・トリオ」として1905年から第二次世界大戦直前まで約30年間活動し、世界中の音楽ファンを虜にしました。

残念ながら、コルトーがナチス・ドイツと友好的であったため友情にヒビが入り、トリオは解散してしまいますが、このボックスに収められたベートーヴェン、シューベルト、シューマンは永遠の名盤として現在も聴き継がれています。

カザルス・トリオの演奏については、今後改めて書いてみたいと思います。

 

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